パーソナルコーチ「はる」の、乳ガンとともに生きる日々

コーチが「がん」になったらどう変わっていくんだろう?

ニックネーム はる
名前 北條良子(ほうじょうりょうこ)
職業 パーソナルコーチ、研修講師。
資格 米国CTI認定 Certified Professional Co-Active Coach (CPCC)
HP  http://ryo-ko.net


2014年1月に乳がん告知を受け、4月に温存手術を受けました。現在はホルモン治療中です。癌告知をされた時は、やっぱり頭に死がよぎりました。元気になったいま、残された命を、同じように病気で悩んでいる人のために使うことを決めました。

あなたは乳がんを経験して、これからどう生きたいですか?
コーチングという対話を使って、自分の中の答えを見つけませんか?

神奈川県在住。小学生男児、1児の母。




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カテゴリ: 手術までの道のり

「オッケー、もうこれで(しこりは針に)入ったよ。………でももう少し押そうかな。力を入れるよ?」そう言われて、乳房を思いっきり引っ張られる、と同時に針をぐいっ押される。実はこれをもう3回。そろそろ終わって欲しい。


大きさ5mmのしこりを針て捉えるのは、相当難しかったみたいだ。エコーで見て確認しながらの作業なので、先生は片手にプローブ、もう片手に針。かなりせわしない。とはいえ私も観察する余裕は無くて、目をつぶりっぱなし。わかるのは気配だけ。





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自分が強くなったなあ、と実感する。
マンモトーム生検はそんな機会になった。


亀田京橋クリニックでの診察から1週間。MRIで新たに見つかった5ミリのしこりと、エコーで見つかった乳房下部、石灰化部分の細胞診をする日。

前の日に改めてもらった資料を見ると、二子玉川でやったホチキスタイプの細胞診は「太めの針」とあるのに対して、今回は「太い針」。要はぶっとい針を刺して、細胞を吸い上げる。
(イタイカナ…)ちょっとブルーになる。

相変わらず美しい病院に、12時過ぎに到着。少し緊張して待つ。エコー室に呼ばれたのは13時。処置に時間がかかるから、と最後になるのは了承済み。


エコー室で上半身裸になる。ベッドにはビニールと紙が敷かれてある。今日は流血もあり、の予告の意味だ。更にブルーになる。


そんな時にK先生が登場。
「ずいぶん緊張してるね、大丈夫だよ」と笑顔で腕をさすってもらうと、自然に笑みがこぼれる。ちょっとした一言に安心する。

検査技師と先生とで、しこりと針の差し込み位置を確認しながら、油性ペンで乳房にマーキングされ、いよいよ処置開始。「ちょっとチクっとするよ」と麻酔の注射を乳輪の際に打たれる。


ものすごく正直に言う……ほぼ、痛くない。
最近の針は、技術が進んでかなり細い。
そして、私は図太い。

去年、2回の手術をしてみてわかったこと。手術や検査には終わりがあって、自分はそれを乗り越えられる。途中泣いたり苦しんだりするけど、終わったら結局ケロっとしてる。

この「私って図太いわあ」っていう自分への信頼、そして医師への信頼の二つが揃うと痛みを軽くするのにものすごく役立つ。


あと2本、麻酔を打って、「これは痛い?」といろいろなところを突かれる。でも気配だけしかわからない。「大丈夫ですね」と回答。

「始めるね。あっちを向いていたらいいよ。」
と言われて壁側を向く。そのうち背中を液体が流れる感覚。

(アア、ワタシノ血ガナガレテル…)
針を差し込みやすいように切開してるんだ。でも大丈夫、痛くない。


「じゃあ刺すね」
先生の声にハッとする。まだ刺して無かったのね、見えないからどこまで進んだかわからなかった。
思わず、(カミサマ…!)と念じてしまう。普段神など信じてないのに。少しビックリして、笑ってしまう。

(リョウセイ出ろ!)と願いをこめて、針を待ち受けた。
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ブログをやってから起こる不思議な現象。


時々、ブログを見てくれて、メッセージをもらうことがある。古い友人の時もあるし、イベントで1回会ったとか、セミナーで一緒だっただけとかって時もある。


そこに書かれてあるのは、大抵が喪失の物語。
亡くなった家族について。
事情があって会えない大切な人について。
失われるかもしれない命について。


メッセージを開けるのは、大抵真夜中。仕事や家事が落ち着いてから。物音がしない静けさの中で読んでいると、書いた人が流した涙、漏らした嗚咽、「あの時どうすれば良かったのか」という思いが伝わってくる。


実際に書いてあるし、書かれて無くても伝わってくるのは、
「つらいのは、はるさんだけではないよ」
「自分だけがつらいと思っていたけど、そうじゃないとわかった。」
という言葉。


癌になった人は、みんな「どうして自分がなったんだろう?」「なぜ自分だけが?」と思うんじゃないだろうか?

答えはもちろん無い。誰も教えてくれなくて、腹立たしくて不安で。


そんなことをしつこく考えて、井戸の底に落ちそうな時に、このメッセージはやってくる。


私はいつも気の利いた返事が書けなくて、もどかしくて残念なんだけど、こういったメッセージには、とても感謝している。あなたの大切な話を聞かせてくれて、心の柔らかい部分を見せてくれてありがとう、って思ってる。



「これは副乳がんの可能性もあるね。生理前に脇が腫れたりしなかったかい?」

ブラウスを脱いで裸になった私にK先生が言う。よほど脇に近いから驚いた顔をしている。いいえ、ありません、と答えながら、癌についてまだまだ知らないことが多いんだなあ、って思う。

そのまま先生は両手を重ねて、脇から乳輪まで肉を押さえつけながらなで下ろす。「強いて言うならここかなあ?」乳輪の上で手が止まる。私もがん研で指摘された後、何度が探ってみた。確かにそこにあるか無いか…かすかに感じるものがある。

「後で必ず消えるからね」
青い油性ペンで一円玉大の円を乳房に直接描かれる。

「センターと新しいしこりはずいぶん離れているんだなぁ。だから全摘で、って話になったんだね」
そうだと思います、って答えながら、少し暗い気持ちになる。同時にこの人に全摘って言われたら仕方ないな、っていう諦めと。

その後の超音波検査で、青い円だけではなくて左右全体を再検査された。驚いたことに私はその検査で寝てしまった。田園都市線や銀座線のラッシュにもまれて疲れてたっていうのもある。でもこの時、もう安心してしまったんだと思う。この先生なら大丈夫だ、って。

検査後、30分ほどして呼ばれて行くと、私の電子カルテには、もう放射線医の所見がついて返ってきてた。「良性」の文字が踊ってるのが見える。


K先生によると、
・センターのしこりは脇に近いので、副乳がん、リンパ癌を疑ったが、やはり乳腺にできた乳がんで間違いない。


・5mmのしこりは、今のところは良性。またセンターとのつながりは無いと診断した。だが周りの組織と明らかに違う形をしている。将来のことを考えると、手術時に一緒に取ったほうがいいかもしれない。


・乳房下部に、石灰化が見られる。組織の炎症では無いかと考えるが、良性だと確認しておいた方が良い。


・以上を考えて5mmのしこりと乳房下部に、再度の針生検を提案する。


かなり太い針で、体に負担があるんだよね、と先生は気の毒そうな顔をする。いいです、やりますとすぐに返事。私の30代は本当に病気や手術と縁があった。次で4度目の手術台だ。もちろん痛いのはイヤ。怖い。でも検査や手術には必ず終わりがある。やってみれば大したこと無かったって思う方が多いし、そう思えた時の、自分の図太さを感じる瞬間が私は好きだ。


「診断さえつけば、どこでも手術できるからね」って笑顔で先生が言う。すかさず「S大学病院に戻るつもりはありません」って言葉を押し込む。がん研みたいに戻されたらホントに困る。必死だ。

「そうなんだねぇ…もちろん千葉の本院でもできるし、僕は普段は済生会病院で手術してるからそこでもいいよ」と苦笑しながら受け入れてもらえた。安心が胸に広がる。


「一つ…はるさんに言っておきたいことあるんだけど…」
「はい…」…なんだろう?

画面を見ていた先生が振り向きながら、言う。

「これは、進行癌じゃない。ごく初期の癌だ。だから心配しないで。心配が体に良くないんだよ。治るよ。」

こんな先生ホントにいるんだ。

止まっていた時間が動き出した気がする。癌のこと、乳房のことばかり考えてた10日間。泣きながらやってた仕事。かえって家族の前では泣けなくて、心とはウラハラに普段通りに振舞ってた日常。

診察室を出るため立ち上がると、先生も立ち上がって送り出してくれる。「治すからね」って言いながら。

100%治る保証なんて無い。どんな小さな腫瘍でも、再発や転移をする人は、少ないけどいる。先生ももちろん良くわかってるとおもう。だから、だからこそありがたいなって思った。


病院を出たのが、12時。13時までに品川の本社に戻らなきゃ。14時には笹塚でアポイントメントがある。

急がなくっちゃ、間に合わない。
つぶやきなから駆け出した私の足取りは、軽かったと思う。







京橋駅直結の真新しいオフィスビルの中。そこに亀田京橋クリニックはあった。絨毯と花柄のファブリックソファ。まるでホテルのようなラグジュアリーな雰囲気。

コンシェルジュのような女性が1人いて、人間ドックの顧客たちをにこやかに案内してる。でも予約を絞っているのか人はほとんどおらず、待合特有のざわついた空気は無い。

私はそこで1人不安な気持ちを抱えて座ってた。ここでも全摘の可能性を示唆されたら、もう覚悟しなきゃな、という気持ちが重くのしかかってたから。

新しい先生の名前はK先生というらしい。
どんな人だろう…

20分ほどして流れるアナウンス。

緊張して診察室に入ると、そこに座っていたのは長い髪にゆるやかなウェーブをかけて、ニコニコ笑っている男性だった。

「こんにちはKといいます。」
「はじめまして、よろしくお願いします」

丸顔にたれ目で優しそうだけど、太いまゆと獅子鼻が意志の強さを感じさせる。その笑顔に少し気持ちが緩む。

先生によると、持ってきたCDRは読み込みに時間がかかっているので、まだ見れない。「自分でシコリって触れるの?」と聞かれ、はい、っていうと、じゃあどこにあるか書いてみて、と先生手書きの乳房の絵を示される。

私のしこりは、ほぼ脇くらいにある。書き込むと、今回問題なのは、ここなんだね、と脇と乳首の中間点に円を書かれる。

「で、S大学の先生にはなんて言われたの?」
「2つ目が癌なら、全摘だって…」
「…そうなの?…その先生がどんな手術をするか知らないけど、僕なら全摘はしないなあ」
「!」

先生は私の目に涙が滲んだのを見てびっくりしたみたいだ。画面と私をチラチラ見ながら、「他できついこと言われて、こっちにくる人、多いんだよ、その先生も忙しかったんだね。忙しいとね、言葉を投げつけちゃう人がいるんだ」と言ってくれた。

「僕はね…」と言って、二つのしこりを大きな円で囲む。「ここを取っても、また乳腺を引っ張ってのばしてきたらいいと思うよ。きっと胸は残せるよ、心配しないで」

どの医者だって、自分が担当した患者が、元気になること、健康になることを望むだろう。でもこの発する言葉の違いは何なんだろう。
思いつめてた心が少し軽くなる。心が生気を取り戻す。

「この病気はね、心配するのが1番よくないんだよ、だから心配しないで」
「はい…」

じゃあまずは触診をしてみよう、と提案される。強めに押すから痛いかもしれないけど、大丈夫かな、とも聞いてくれる。

大学病院では触診がないままに手術の予約を入れるところだった。患部を見たことも無い人に切られる不安を感じてた。触診されることが、こんなに安心につながるなんて…

この時、私はすでに大学病院に戻りたくないっていつ言おうかを考え始めてた。

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