入院生活も4日目。
いつもどおり、6時起床、7時朝食。9時の夜勤、日勤の看護婦交代の時、「今日、お風呂にはいりますか?」と聞かれる。何気なく、入ります、と答えて、手術後に胸を見るのが初めてだなあ、と気づく。少し緊張する。


今日は右隣のベッドの方が退院。
ウキウキした表情でお迎えを待っている。ジッと座っていられないようで、立ったり座ったり忙しい。


娘さんが迎えに来て、さわやかに去って行く。


13時。昼食後、風呂の時間。
ドレーンをつけたまま、どうやって入っていいんかわかんなくて、ナースステーションで聞いてみる。

年配の女性看護師が、私を担当している若い看護師を横目で見つつ、「あなたの担当でしょ?」って小さな声で言ってから、ニッコリ「ベッドでお待ちくださいね」と。


待ってると、さっきの若い看護師が来て、説明してくれる。
ドレーンを吊り下げているポシェットからバックを出す。パックは防水だから、濡れてもOK。傷口も防水テープで覆ってるから、濡れてもOK。行ってらっしゃい。


病院のお風呂は古いタイル張りで、家庭の風呂より少し大きめ。皆が気を使って綺麗に使うから、髪の毛なんかも落ちてない。


そっとサラシを解いて、陽光が明るく差し込む浴室に滑り込む。湯気でくもった鏡を手でキュッと払う。



もちろんあった。そこに新しい胸が。


まず、目に飛び込んできたのは、黄色と紫の色彩。すごい内出血、ということ。左胸全体が黄色くて、小さな鉤爪でひっかいたような複数の紫の線が、乳首から首に向かって走っている。センチネルリンパ節生検の跡だろうか…?


傷口は脇にあって、3cmくらい。想像したより小さくてホッとする。





でも…元々腫瘍があったところは、ペコっと凹んだようになってて、明らかに前とは違う、と感じる。全体的にも小ぶりになって、無くなった部分を補うために寄せられたのか、少し外向きにもなった。





体を洗い終わって着替えながら、「泣くほどのことじゃないな」って小さくつぶやいてから、気づく。


私…自分に嘘をつこうとしてるな…

本当はかなり泣きたい気持ちだ…



別に無くなったわけでも、形が悪いわけでも無い。


ただ、自分が別のものになった、という感覚。なくなったものに対する惜別の感情。



あぁ、私、自分の胸や体が、すごく好きだったんだなあ、って実感する。でも病気界に身を置くと、自分より辛い人、苛酷な状況の人にたくさん出会う。だから我慢しようとしてたんだなあ…



やがて私はこの胸を見慣れてしまって、元からこんなだったと思いだすだろう。


自然にそう思えるまで…空元気など出さず、少しさみしい、少し切ない気持ちも大切に過ごしていきたいと思う。