上半身が裸の私の周りに、大の大人が3人も集まってる。検査技師2人と主治医が眉根を寄せ、目をこらしている。新しく見つかった4,5mmのしこりが、どこにあるのかわからないのだ。

「ニプルと同じ高さにあるはずだよ」と主治医。
「これかな~・・・というやつはあるんですけど」まだ20代かな、かわいらしい女性検査技師が言う。

画面には小さな丸いしこりがうつっている。
「ちょっと指でつぶしてみてよ」という主治医の指示に、どうしてよいのかわからないのか、技師がオズオズと肉をつまむ。
「うーん、つぶれないね~。色はのる?」
パッと画面が切り替わって、しこりの下部に赤い色がうつる。
「少しだけど色があるから、やっぱり血流が集まってるのかなあ・・・」


(アア、イッタイナニガオコッテイルンダロウ・・・)


「はるさん、どうする?これ針で刺して帰る?」
「はあ・・・」突然ボールを投げられても。
「これで癌が出たらいいけどさあ、問題は出なかった時で。出なかったらこのしこりがMRIに映ってたやつか確信が持てないから、またMRIをやって、MRIやりながら針で刺す、って方法になんのね」

つまり、時間がかかるってこと。それにしても、「癌が出たらいいけど」って言い方がすごく引っかかる。

「最初からMRIやりながらでお願いします」
「だよね~、でもさ、これ保険適用外で10万円くらいするけどいい?」
10万円はイタイ!正直、ここまで検査で万札が何枚か飛んで行っている・・・でもいいも何も、やらなきゃ始まらない。
「・・・わかりました。大丈夫です。」

主治医の説明だと、これは先端医療にあたるので保険適用外、しかもS大学病院でやるとその後の手術も保険適用外になるのだという。なので新しく京橋にある「K総合病院」に行くよう提案され。

「K総合病院はさあ、日本で数少ない『乳がんを内視鏡で手術』をする病院で、乳房温存とか再建に力を入れてるんだよね。検査に行ってちょっとそこの先生に相談してみなよ。本院は千葉の鴨川にあって遠いんだけど、手術はそこでやって、後の治療は東京の分院でやってくれるよ」とのこと。


千葉の鴨川って地名に聞き覚えがある。昔、TV東京の経済番組で特集を組まれていた病院があった。富裕層を相手にした、かなり豪華な施設とホテルのようなサービス。うちはけっして金持ちじゃない。でも、温存できる可能性があるなら・・・


エコーで良性であることが確認できれば、明るい気持ちで帰れたのに・・・・
しょんぼり下を向きながら着替えてくると、検査技師の女の子たちの会話が聞こえてくる。

「もお~、はまっちゃったよ。なかなか見つからなくて。」

私のこと言ってるんだ。時間かけちゃってごめんね・・・でも・・・・・・ホント人ごとなんだね。

検査技師の女の子たちに、怒りも悲しみも感じなかったけど、この大学病院との心の距離の遠さを改めて実感する。私、この病院で手術しても、その後ずっと「ホントにこれで良かったの?」と問い続ける一生になりそう。
やっぱり「この人になら」と思える先生に会いたい。自分にとって最悪の結果も「この人に言われるなら納得する」と思える人と。私、この病院にちっとも響いていない。

幸いなことに、私の癌はゆっくり成長するタイプだ。粘ってみようと思う。自分の選択肢が見つかるまで。