3ヶ月ぶりの乳がん定期検診。

3月の京橋はまだ冬のようで、分厚いダウンコートでも身震いしてしまう。 

太陽が雲に隠れ、薄暗いのが気分を重くさせる。

そんな外とは対照的に、病院の中は明るく暖かかった。
重厚な絨毯に座面が広い椅子やソファ。インテリアが ホテルのような雰囲気で、「病院に来た」という重い気分を取り払ってくる。

ホーっと息を吐いてソファに座り、ひと心地する。

目の前には液晶テレビがあり、何気なく目をやると、病院サービスの改善をしたらしく、
・検査の待ち時間が長いとご意見をいただきました。→担当を増やし、検査の時間を短くしました。
・スリッパが滑るとご意見をいただきました。→スリッパを買い換えました。

などと、患者のサーベイに真摯に取り組んだことを伝える画面が流れていた。

きちんと患者の声に耳をかたむける病院に行けることは幸せだ。自分も大切に扱ってもらった気がする。なんとなく心の幸せ度が上がったような。そこからの1時間半後、やっとK先生の診察室に呼ばれる。

先生は相変わらずにこやかで、でも以前より随分痩せたように見える。顔が一回り小さくなったような印象だ。以前、ダイエットをしていると言っていたから、まだ続けているのかもしれない。


「変わったことはないかい?心配なことは?」と、相変わらず優しく聞いてくれる。
こちらは何もないですね、と答えると、カルテを見ながら「次の5月の検診は、超音波をやろう」とのこと。

そろそろ手術後2年ですものね、と言うと、「そうだね、そして次でリュープリンはおしまいにしよう」とも。リュープリンとは、生理を止めるホルモン注射。とうとう来た。

リュープリンは、1本2万円以上するため、財布的にはやめてもらうのは本当にうれしい。年間で8万円医療費が変わってくる。


ただ・・・そうすると生理が復活する。無理やり止めていたものが動き出すのだから、 心と体にどのような影響があるだろう。ちらりと不安がよぎった。


その心を見透かされるように、「2年以上リュープリンをやっても、効果が特にあるというわけでないのが、学会で発表されたんだよ」と補足の説明。アメリカの学会で発表される内容で、日本の標準治療は変わってくる。日進月歩であることは素晴らしいことだ。


「大丈夫だから心配しないでねー」というK先生の声に見送られて、笑顔で診察室を出る。


その後、処置室でリュープリン注射を看護婦さんに打ってもらう。50代の看護婦さんは前回と同じなだな、と思ったので、以前もやっていただきましたね、と言うと、「わー覚えてくださってありがとうございます。」と心から嬉しそうな笑顔が返ってきた。病院もこういったちょっとしたことで、楽しくなるものだなぁと思う。


が、事件は最後に会計で起きた。

会計待ちをしていると、60代だろうか、女性が「あの・・・」と遠慮がちに会計に声をかけている。

「検査なんですけど、水は飲んでいいんでしょうか?」

会計の女性たちは「え?」という顔で一瞬固まっている。明らかに頭の上の吹き出しに(ここに聞かれても)も書いてあった。


女性は「昨日の夜、食べちゃダメなのに食べてしまって・・・お水は今いいんでしょうか?」とくどくどと重ねて聞く。

会計係の一人の女性が、「担当はなんと言っていましたか?」と聞く。
声には若干のイライラが感じられた。

それがわからないから、聞いてると思うのだから、不思議な質問だ。

「ごめんなさい」と女性患者が謝ると、「担当が来ると思うので、お待ちください」と素っ気なく返答。

下を向いて座る女性。

誰が詫びるのが正しいんだろうか。


患者の声に反応して取り組んだサービス改善も、患者に向ける優しい看護婦さんの笑顔も、一瞬で台無しだ。患者の信頼はガラガラと崩れてしまう。

今、この病院に来ている人には、ここに来るまでにストーリーがある。
もし私が、癌を告知されての再検査だったら、この仕打ちは深く傷つくだろうなと思ってしまう。


医者や看護師だけではなくて、受付、会計の人までが病院の顔であり、また患者は当然その人たちにも優しくしてもらいたいものなのだ。もちろん私がされたわけじゃない。でも、いつそうされてもおかしくない対応を見て、嫌な気持ちになったのである。


今回、書こうかどうか迷った内容だが、医療に携わる方に、少しでも患者の気持ちを理解してもらいたく、ここに記す。


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2016年3月26日(土)に、調布市国領駅近くで「働く人のためのコーチング体験会」を開きます。

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