<1年後の覚え書き>

また春がやってきた。
去年の4/18に乳がんの手術をして1年。この記事を5/2に書いているのだから、月日が経つのは本当に早い。



時々、入院していた時の感覚を、感慨深く思い出す。今年の4月は桜が散っても寒い日が続いて、春らしさを実感できなかったけど、去年のあの頃は、初夏を思わせるあたたかさ。


やっと手術を受けられる、という安堵に似た気持や、手術後の「終わった」という安心感。


6人部屋の病室の、窓を開け放って風を楽しむ感覚。白い部屋を軽やかにはためく白いカーテン。
これもまた、白いシーツを素足でなでて楽しむ感触。

夜は夜で、洗面所から見る、東京タワーや六本木ヒルズの輝き。

リンパ液をためるバッグを携行していたから、動きや移動に不自由があった感覚も懐かしい。

自分も含めて病室の女性たちは、みんな何かしらのがん患者で、手術直後だったり、抗がん剤治療中だったり。全然笑えない状況だったけど、テレビも無いアナログな病室で、季節のせいか、なんとなくのんびりとした雰囲気で過ごしていた。意外なほど、暗い思い出じゃない。







なぜ感慨深いんだろう?

あの頃から、ずいぶん遠いところに来た、と思うからか。衝撃の乳がん発覚、二つ目の腫瘍の疑い、全摘の提案…去年の1月から4月は、私は真っ暗闇の中にいて、もがいてあがいて這い上がれなかった。うずくまって動けなかった。文字どおり、絶望、を味わった。


それが今、乳がんは少し遠い存在になり、家族なんかは話題にも出さない。私も普段、忘れてることも多い。

行きたかったコーチングのプロコースに行けて、打ち込むことができている。

ほんとに別世界にいるかのようだ。
それを思うと、今自分が立っている世界が明るくてうれしくて、涙が出てきてしまう。

生きていて良かった。健康に過ごせていて良かった。子供の行事に参加できて、成長が感じられて良かった。心からそう思う。


生きている喜び。命の輝き。


それを感じながら、「ガンはいつか再発転移するかもしれない」と思ってる自分もいる。その可能性が0じゃないことをひそやかに考えている。ブログランキングの隣の記事で、芸能人の健康状態を伝える芸能ニュースで、がんの再発や転移の(そして死亡の)、知らせは決して珍しいことじゃない。


うまく言えないけど、乳がんを経て理解できたのは、世の中の苦しいことや不幸は、決して人ごとではないということ。うまくいっている、と思う人生でも、実はいつの間にか病が進行していることだってあるのだ。それが実感できたからこそ、この何でもない平和な毎日、好きなように身体を動かし、好きなことに打ち解ける毎日に、胸がふるえるのだ。